4.3 光学共振器及び発振の閾値条件


 E2とE1準位間の粒子数反転分布状態になると周波数ν=(E2-E1)/hの光に対する増幅の必要条件が成立する。しかしレーザー光を発生する主役は光学共振器が担っており、場合によっては光学増幅器も必要となる。(増幅器の詳細については後に「レーザーの増幅技術」の項で説明する)電子回路における共振器はすべて増幅作用、正帰還システム、共振回路と共振出力システムで構成されているが、光学共振器もこれと同様な構成を持っている。以下、光学共振器の作用、レーザー光発生の物理過程および発振の閾値条件について述べる。

 

4.3.1光学共振器の作用

 §1節で述べたように能動媒質を含む固体光学共振器は、2つの平行な平面光学ガラスミラーとロッド状の能動媒質で構成されている。図4-3に示すようなパルス発振ルビーレーザー共振器を例として説明する。

 能動媒質Cr3+イオンを添加したAl2O3単結晶を丸形ロッドに加工し、その両端を平行な平面に精密研磨して、これを二つの平行な平面ガラスミラーM1とM2の中間に挟み、ロッドの研磨面とミラー平面が平行になるように配置する。そのような形状をファブリーペロー型の光学共振器と呼ぶ。パルス発振をする場合、694.3nmの光に対し、M1の反射率はR1≒100 %、多層誘電体薄膜をコーティングしたM2の反射率をR2≒50〜60%にする。

このような共振器は主に二つの作用を持つ。

@正帰還作用

 強いフラッシュキセノンランプでルビーロッドを照射してCr3+イオン粒子が反転分布になると、694.3nm波長の光に対する増幅の必要条件が満たされる。共振器内の最初の694.3nm波長の入射光はレーザー媒質の準位間で自然放出した光である。その光はルビー結晶ロッド内に4π立体角で伝搬しながら増幅される。共振器ではその構成上、共振器の光軸方向に伝搬する光だけがM1とMで全部または部分的に反射されて、再びルビー結晶ロッド内を経由して再増幅される。このように二枚反射ミラーでの繰り返し反射により増幅作用が強められ、雪崩的過程を発生しながらM2ミラーを透過してくる光はますます強くなり、M1とMミラーの繰り返しの反射が正帰還作用となる。部分反射のM2ミラーはレーザー光の出力口になる。共振器の光軸以外へ伝搬する光は一回あるいは少数回の回折により、共振器外へ出て損失となる。

A共振作用

 能動粒子としての活性物質の準位にはある定常幅があり、そのため自然放出での蛍光スぺクトルもある一定の波長範囲を持つ。例えば室温条件でのルビー内のCr3+イオンの蛍光スペクトル幅は0.5nm、YAG母材内のNd3+イオンで0.2〜0.3nm、ガラス母材内のNd3+イオンで20nm、He-Neガラスの蛍光波長幅は約0.002nmである。しかしレーザーで放出するスペクトルの幅は蛍光波長幅より非常に狭くなる。その原因は、蛍光スペクトル中のすべての周波数(あるいは波長)の光が共振条件を満足するわけでなく、特定波長の光だけについて共振条件が成り立つからである。

 音波共振器の共振条件は、

 Ls=q・Λ/2                            (4-15)

で示される。(4-15)式中のLs共振器の長さ、qは正整数、Λは音波長である。(4-15)式は音波共振器内に定在波の発生する共振器の長さと音波長の関係式である。そして光学共振器についても、正、反両方向に伝搬した二つの同じ周波数、同じ偏光の重ね合わせにより定在波が形成される共振条件は(4-15)式と全く同じ形式である。

 L*=q・λ/2                            (4-16)

(4-16)式中L*は共振器の二枚の反射ミラーM1とM間の光学長さ [光学長さ=対応波長の光に対する屈折率n(λ)幾何長さL]、λは共振する光波長である。共振器内の光軸方向に沿う自然放出の蛍光の中で(4-16)式を満足する波長の光で起こした誘導放出光のみが定在波を形成することができ、(4-16)式の条件を満足した光の共振が起こる。レーザーから発射する光周波数特性は光学共振器で決まるといえる。これが光学共振器の共振作用(あるいは光周波数の選択作用)で、レーザー光の優れた単色性の決定的な原因である。


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